総量規制がない
消費者金融などの貸金業者を通じて融資を受ける場合、いわゆる「総量規制」というものがあります。
これは、融資を受ける人の年収などの3分の1までしか借り入れ総額を設定できない規制のことを言います。
例えば、年収300万円の方であれば、年収の3分の1である100万円までしか、借り入れることができないことになります。この総量規制があるのは、個人が自分の年収に比べて不釣り合いな金額を借り入れすることにより、その返済が困難となってしまうことを防ぐためとされています。
消費者金融の貸付は金利が高いため、借り入れ金額と返済金額の差が大きくなりがちです。そのため、年収に見合っていない借り入れを行うことで、借り入れをした人が破綻しないよう、借金限度額として、総量規制が設定されています。
他方、銀行系ローンは銀行が行うものであって、消費者金融が行うものではありません。
そのため、銀行系ローンでは総量規制が存在せず、審査が通る限り無制限に借り入れをすることができます。
銀行系ローンでは住宅向けのローンなどがありますが、これらに総量規制をかけてしまうと、わずかな金額しか借り入れることができず、住宅購入の目的が達成できなくなるためなど、色々な説明がなされています。
確かに、銀行系ローンは消費者金融からの借り入れに比べれば金利は低いですが、借り入れ金額が大きくなれば、わずかな金利でも大きな負担となります。そのため、銀行から必要以上に大きい金額を借り入れてしまう結果、その返済に困窮し、破綻してしまうという問題が存在しています。
また、消費者金融で総量規制により借り入れ限度額まで借り入れてしまった方が、さらに借り入れの上限がない銀行系ローンで借り入れを行うことで、返済すべき借金が雪だるま式に増えていくというケースもあります。(多重債務問題)
このように、銀行ローンには無制限に借り入れしうるという点に落とし穴が存在しています。
金利・利息について
銀行も慈善でお金の貸付を行っているわけではないため、借り入れた金額について金利をプラスして返済を求めてきます。
この金利は、銀行系ローンの種類によりますが、住宅ローンなどの年2~5%程度の金利が低いものから、カードローンなどの年15%にも及ぶ金利が高いものまで様々存在しています。
この金利については、利息制限法の中で規制があるものの、先ほどお話ししたように借り入れできる金額自体は、審査や基準を満たす限り上限はないため、借り入れ金額が大きい場合、金利によって返済額が膨れ上がってしまうことになります。
住宅ローンなどは金利が低いため安心しがちですが、そもそもの借入額が膨大になりがちなため、金利が低いからといって安心できません。審査が通るからといって無計画に借り入れしてしまった結果、返済に困窮してしまうというケースもあります。
そして、返済に困窮して支払いが滞ってしまうと、遅延損害金というものを別途支払う必要が生じます。遅延損害金の場合の金利は最大年29.2%にも及ぶため、一旦返済が滞ってしまうと一気に膨大な負担に襲われることとなります。
また、通常であれば月々ごとの分割返済となることが多いですが、返済を滞ると、月々の分割返済ではなくなり、残りの借金を一括して返済しなければならないことになるケースもあります。
このように一括返済を求められた場合、返済すべき金額に加えて日に日に増えていく遅延損害金についても支払わなければならないため、借り入れた方の負担は計り知れません。
銀行系ローンの金利は、それ自体に関してみれば、消費者金融の金利などに比べて良心的なものの、借り入れ金額に規制がないことと合わせて考えると、決して無視できる問題ではありません。
借り入れ金額が大きくなればなるほど、金利も大きくなり返済すべき金額も大きくなるため、リスクは大きくなっていきます。
こういった状況で返済を滞ってしまうと、一気に負担が膨れ上がるため、銀行系ローンの金利・利息には、総量規制がないことを踏まえて考えると大きな問題があります。
ローン商品の形がい化
銀行系ローンのタイプは複数あり、住宅を対象としたものから、結婚式費用を対象としたものまで、複数存在します。
これらのローン商品はそれぞれ金利が異なり、また、審査条件なども異なっています。しかしこれらのローン商品を利用するにあたり必要なのは年収や勤続年数などの、無事返済が可能かどうかの情報であって、本当に結婚式費用に充当するかどうかすなわち、ローンの目的・使途ではありません。
そのため、結婚式費用ローンやリフォームローンを利用しながら、それによって借り入れたお金で、すでにある借金を返済したり、生活費にあてるといったケースもあります。
借金を借りてすでにある借金を返済するという手法は消費者金融では、総量規制の問題で制約がありました。しかし、総量規制のない銀行系ローンではその心配はないため、名目上結婚式費用ローンやリフォームローンを契約しつつ、そのお金ですでにある借金を返済するということが可能になります。
このように名目上銀行系ローンを利用しつつ、それで借金を返済するという手法が利用されるようになった結果、個人の借金が雪だるま式に拡大していくというケースがあります。返済するために借りるという仕組みが可能になってしまう点にも、銀行系ローンの問題があります。
銀行系ローンの問題点のまとめ
一時期蔓延した消費者金融の問題は、総量規制がなされることにより、借入金額の上限が設けられたため、ひとまずの解決に至りました。
しかし、その問題は消費者金融から銀行系ローンに移って、再燃しているのが現状です。
銀行は銀行系ローン利用者にお金を貸し付ける場合、利用者の借金を保証する保証会社として消費者金融を立てます。
これにより、銀行は債権回収のリスクを回避できる一方、ローン利用者は返済を滞ってしまった場合、自分の代わりにローンを返済した保証会社に対して、その後支払うことになります。
支払う相手は結局消費者金融になるため、総量規制がなされた現在であっても、ローン利用者は消費者金融による取り立ての負担から逃れることはできていません。
銀行というオープンな存在から借り入れるため、多少返済が滞っても許してもらえるといったルーズな計画で挑むと、大きな問題に発展することは注意すべきと言えます。