はじめに
個人向け銀行ローンは、カードローン(ネットキャシング)、目的別ローン(不動産ローン、自動車ローン、教育ローン等)、フリーローンに分けることができます。
急にお金が必要になったり、不動産や自動車を購入したり、現代社会においてローンを組むことは避けることができません。
ですが、無計画にローンを組むことはリスクを伴います。
この記事では、銀行による個人向けローンについて、それぞれのローンの種類ごとに借り入れの仕方について解説していきます。
カードローン
カードローンは、金融機関の発行したカードを使用してCDやATMからお金を借りることのできるローンのことです。
特徴
他のローンとの違いとして特徴的なのが、「貸出限度額の付与」です。
限度額まで借りるとそれ以上は借りることができなくなりますが、返済して限度額未満にすると新たに借りることができるようになります。
普通のローンは、返済しても新たに借りることはできませんが、カードローンの場合には何度でも借りることができるわけです。
一度契約してしまえば、実際にお金を借りるときに面倒な手続きがいらないため、便利な半面つい借りすぎてしまうので注意が必要です。
一般的なカードローンは、保証人や不動産などの担保が不要という特徴もあります。
この点も便利なのですが、気軽に借りることができてしまうため、計画的である必要があります。
返済方法
銀行カードローンの多くは、「残高スライドリボルビング方式」を使っています。
リボルビング返済というのは、個々の取引とは関係なく残高全体に対して一定額を返済していく方法をいいます。
残高スライドは、残高によって支払額が変化する方式のことです。
例えば、借入金の残りが10万円であれば返済額は2,000円、20万円のときは3,000円というように定められている方式です。
このように、借入残高に応じて一定額の支払いをすることがカードローンの特徴の一つです。
この方式は、毎月の返済額を低くできるという特徴があります。
その結果、家計への影響も小さくなるように見えますが、返済金の多くが利息に充当され、元金がなかなか減らないという問題があります。
定められた金額は最低限のもので、通常は自分からもっと多く返済することが認められています。
そのため、借り入れの際には、必要な返済額にかかわらず、積極的に返済する必要があることを認識しておくことが大切です。
申し込みについて
契約の申し込みは、店舗に直接行くほかに、パソコンやスマートホンからでもできるようになっています。
このときに気をつけるべきことは、利用規約をきちんと読むことです。
そのため、画面の小さいスマートホンはなるべく避けたほうがいいでしょう。
わからないことがあれば担当者に尋ねることも必要です。
電話のほか、電子メールやチャットでの問い合わせに対応しているところもあります。
疑問点を放置したまま契約をしないようにしましょう。
申込書類の提出も必要となりますが、正確に記載しなければなりません。
嘘の内容を書いてしまいますと、詐欺になる可能性もあります。
申込用紙には年収の記載が必要となります。
その内容が正しいことを確認するため、収入証明書が原則として要求されます。
消費者金融の場合、貸金業法によって総量規制がかかり、年収の3分の1までしか原則として貸し付けることができません。
銀行の場合には貸金業者ではありませんから法律の対象外となりますが、自主規制により提出が求められます(原則50万円以上の場合)。
最近では、本人確認書類や収入証明書をWEBからアップロードできるようになっているところが増えています。
カメラやスキャナで読み取ったものを提出するため、偽造が比較的簡単に行えてしまいます。
実際、給与明細書を書き換えて提出してしまう人が少なくないようです。
社会保険料等の金額が変わってきてしまいますから、給料金額のみ変更したとしてもすぐに発覚します。
信用機関に報告され他のローンを組むこともできなくなり、私文書偽造、同行使罪という犯罪にもなりますから、絶対にしてはいけません。
身分証明書も偽造した場合には、公文書偽造、同行使罪という重い罪も成立します。
ネットキャッシング
カードを使わずに銀行口座に入金する形で貸し付ける、「ネットキャッシング」というものもあります。
利用限度額内で繰り返し借り入れることができますので、カードローンに似ています。
銀行のカードローンを利用するとネットキャッシングが利用できることも多いので、ここではカードローンと区別しません。
フリーローン
フリーローンとは、目的を限定しないローンのことです。
ただし、事業資金に利用することはできません。
特徴
利用するたびに審査を受け直さなければなりませんが、一般的に金利が低い傾向にあります。
申し込みについて
使いみちが自由であっても、どのような用途に利用しようとしているのか、理由を申込書に記載する必要があります。
銀行や金額によっては使いみちが分かる証明書が必要となることがあります。
目的別ローン
用途を限定したローンが目的別ローンです。
ここでは代表的な住宅ローンを中心に見ていきます。
特徴
金額が高額であること、金利が低いこと、不動産等の担保を取ることが特徴といえます。
住宅ローンの場合には、不動産に抵当権をつけます。また、団体信用生命保険に入ることも求められます。
抵当権というのは、お金が返せなくなった場合に、不動産を強制的に売り払うなどしてお金に変え、これを債権者に分配する担保権のことです。
団体信用生命保険は、借主が死亡したり病気やケガで高度障害を負ったりした場合に、残ったローンに相当する金額が支払われる保険です。
がんなど特定の疾病にかかるだけで支払われる特約が設けられていることもあります。
ただし、特約の有無によって利率が変わることがあるので注意してください。
申し込みについて
WEBでの契約に対応する銀行も出てきていますが、一般的には店舗で契約を行います。ただし、仮審査の申込みについては多くの銀行がWEBに対応しています。
添付書類として使いみちを証明する見積書や契約書などが必要となります。
同じ銀行のカードローンやクレジットカード契約をしたり、給与振込口座を作ったりすることで金利が下がることもあります。そのため、金利を下げる方法があるか確認することも重要です。
住宅ローンの金利については、変動金利と固定金利に大別できます。
変動金利は金利が低額ですが、このさき金利が高くなるおそれがあり、固定金利は金利が高いものの変動するリスクはないという特徴があります。
家庭や仕事の内容によって自分にあったものを選ぶことが大切です。
また、他の銀行にも申し込みをすると、悪影響が出る恐れがあるので注意が必要です。
信用情報機関に対する照会は履歴として6か月間残るので、期間内であれば他の金融機関に申し込んだことが分かります。そのため、他の金融機関で融資が下りなかったのではないかと思われる可能性があるのです。
複数の銀行に依頼する場合、6か月が経過するのを待つのが確実ですが、3社程度にとどめた上で同時に申し込みを行う方法もあります。
返済比率
住宅ローンの場合に重視されるのが、返済比率です。
これは年収に対して返済金の割合がどれくらいあるのかというものです。
年収がいくらあるかよって必要な割合が変わってきます。
ローンを組む人が結婚しているときは、夫婦でローンを組むことで返済比率を計算する方法もあります。この場合、夫婦は連帯債務者の関係になります。
審査の方法
申し込み手続きが終わると、融資条件を満たしているか各種資料によって審査されます。
審査の難易度は、カードローンが最もやさしく、不動産系ローンが最も難しいとされています。
借入額が大きいほど金融機関の危険が高まるからです。
信用情報
申し込みをした人が延滞や自己破産といった金融事故を起こしていないかなど、個人の信用を確認するための組織として信用情報機関が存在します。
信用情報機関は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、日本信用情報機構(JICC)、CICの3つがあり、銀行が主に利用するのはKSCです。
ローンの種類を問わず申し込みをすると銀行はKSCに照会することになります。
信用情報は、項目ごとに記録期間が決まっているため、一定の期間が経過すると抹消されます。
例えば、自己破産については、KSCが10年、JICC、CICは5年です。したがって、自己破産をしても10年経過していれば銀行ローンを組むことができる可能性があります。
ただし、この期間はそれぞれの情報機関での保有期限ですから、各銀行のデータベースにはもっと長期で保管されている可能性があります。
したがって、自己破産から10年経過していたとしても、そのときに免責された債務の債権者が同じ銀行の場合、拒否される可能性が高いといえます。
ここで注意すべきは、ローンの種類によっては保証会社の調査が行われるという点です。
例えば、カードローンについては消費者金融系の保証会社がついていることも多いため、保証会社が利用するCIC等のデータも重要となります。
また、延滞等の事故情報については3社で共有していますので、銀行系以外のローンで延滞したとしても銀行ローンを組むことが難しくなります。
例えば、携帯電話の本体を分割払いにしていた場合に、これを延滞したことがあるようなときです。
延滞の記録があるか不安であれば、自分で情報開示を請求して確認することも可能です。
審査項目
勤務先は、安定した返済が可能か判断するために用いられる項目です。
上場会社の社員や公務員等、安定した職業であれば有利とされており、自営業者は不利になりやすい傾向があります。
勤続年数も安定した収入があるかを考慮する上で重視されますので、期間が短いとそれだけ難しくなります。
年収は、多くの人が気にする部分といえます。
審査の対象は「貸しても大丈夫か」という部分と、「いくらまでなら貸せるか」という部分に分けることができますが、年収は、後者の借りることができる「金額」の算定で重視される事項といえます。
住宅ローンの場合には、一般的に年収の5倍以内、カードローンであれば3分の1が無理のない範囲とされています。
勤務先に実際に勤めていないと問題となりますので在籍確認も行われます。
在籍確認は、クレジットカードの申込時にも行われる一般的なものですから過度に恐れる必要はありません。
消費者金融を利用している場合、審査にはマイナスの影響を与えます。
同じカードローンであっても銀行系のほうが金利は安いため、あえて金利の高い消費者金融から借り入れることは考えにくく、そのため銀行系のローンを組むことができなかったと判断されてしまうからです。
また、暴力団員や構成員をやめてから5年が経過していない者など、反社会的勢力に該当する人もローンを組むことができません。警察庁データベースへの照会等により審査されます。
その他注意すべき事項
借入額と利率について
一般的な傾向として、借入額が大きくなるほど利率は低く、金額が小さいほど利率は高くなります。
そのため、カードローンのような少額の融資ほど利率は高く、住宅ローンのような高額の融資ほど利率は低くなります。
借入額が小さい場合、利息をつけた返済額も大した金額ではないことが多く、経済的な負担が大きいことに気がつきにくいことがあります。
借り入れが長期に渡ることが予想される場合には、利息として支払う金額を予め計算して、目に見える形にしておくことも大切です。
複数の借り入れがある場合
借り入れが数社に上る場合、多重債務者として信用に不安が出るため、新たな借り入れは難しくなります。自己管理のしやすさからも、借り入れ先はできるだけ少なくまとめる必要があります。必要に応じて任意整理なども検討することになります。
まとめ
- カードローンやネットキャッシングは、利用限度額内で何度でも返済と借り入れができるローンです。担保が不要であることや、利率が高めという特徴があります。返済方法は「リボルビング払い」となるため、自分から多めに返済していかないと元金がなかなか減りません。
- フリーローンは利率がカードローンよりは低いことが多いです。事業資金に利用できないほかは何に使うかは自由ですが、借りる際に利用目的の申告が必要です。
- 目的別ローンは住宅ローンなど用途が決まったローンであり、利率は低めです。年収に対する返済比率や担保の価値が重視されます。変動金利と固定金利の違いにより返済額に大きな違いが生じることもあります。同時期に複数の銀行に申し込むと審査に悪影響を与えることがあります。
- 融資に先立ち銀行は信用調査を行います。信用情報機関に登録されている情報は項目ごとに記録期間が決まっています。自己破産についてはKSCの場合10年です。
- 審査のポイントは安定した返済能力の有無です。職業と勤続年数が重視されます。年収は融資額に影響します。
- 複数の借り入れがあると融資は難しくなります。